こんにちは、クリエイティブの福島です。今回は、生命保険を選ぶうえでよく目にする「利益配当付保険」について取り上げます。
営業の方から「配当が出る保険ですからお得ですよ」とおすすめされること、ありませんか?確かに「利益が出ればお金が戻ってくる」と聞くと、なんとなく魅力的に思えます。
でも私の考えはシンプルで、「利益配当付である必要はない」と思っています。
なぜなら、配当がもらえるかどうかは不確定で、しかも配当の可能性を含めた分だけ、保険料が高くなるからです。それなら、最初から保険料を安くできる無配当型を選んだ方が合理的だと考えます。
この記事では、「利益配当付保険とは何か?」という基本から、保険の原価を決める“3つの予定(予定死亡率・予定利率・予定事業費率)”の解説、そして利益配当付保険のメリット・デメリット、私が「不要」と考える理由まで、わかりやすくご紹介します。
生命保険の「利益配当付」とは?
生命保険は、加入者から集めた保険料を元に保険会社が運用を行い、死亡や入院などの保険金を支払っています。その過程で運用がうまくいったり、支出が予想より少なかったりして利益が出ると、契約者に「配当金」として還元するのが「利益配当付保険」です。
この配当は、主に3つの利益(利差益・死差益・費差益)から生まれます。
保険料の元になる「3つの予定」とは?
ここで、少しだけ専門的な話をさせてください。生命保険の保険料は、以下の「3つの予定」に基づいて設計されています。
① 予定死亡率(よていしぼうりつ)
これは、「どのくらいの確率で人が亡くなるか」という予想値です。性別や年齢に基づいて計算され、たとえば30歳男性なら、1年間に○人に1人の確率で亡くなる、という統計データをもとにしています。
保険会社はこの数値をもとに死亡保険金をどのくらい支払うかを想定し、保険料を決めます。
→ 実際の死亡者が予定より少なければ、「死差益(しさえき)」が発生し、配当の原資となります。
② 予定利率(よていりりつ)
保険会社が預かった保険料をどれくらいの利率で運用できるかという前提です。予定利率が高ければ、その分保険料は安くなり、逆に低いと保険料は高くなります。
→ 実際の運用実績が予定利率を上回れば、「利差益(りさえき)」として配当に回されます。
③ 予定事業費率(よていじぎょうひりつ)
保険会社が運営するためにかかる経費(営業費、事務費など)の予想です。これも保険料の一部に含まれており、実際の経費が予想より安く済めば、「費差益(ひさえき)」が生まれます。
この3つの差益が出たときに配当が発生する
これら3つの「予定」に対し、実際の結果が良ければ差益が出ます。そして、それを契約者に還元するのが「配当金」です。
ただしここが大事な点なのですが、この配当金は確定されたものではなく、あくまで“出たらラッキー”な不確実なものだということ。景気や運用状況が悪ければ、配当はゼロ、ということもあります。
利益配当付保険のメリット
それでも「配当があるなら付けておいたほうがいいのでは?」と感じる方もいるでしょう。そこで、利益配当付保険のメリットを整理してみます。
メリット①:配当金がもらえる可能性がある
保険会社の運用や経営が順調であれば、配当金としていくらかのお金が戻ってくることがあります。少額でも嬉しいと感じる方は少なくないでしょう。
メリット②:配当を再投資や保険金増額に使える
配当金は現金で受け取るだけでなく、保険金の増額や保険料の軽減に使うこともできます。「自動振替増額方式」などを選ぶと、保険の保障額が増えることもあります。
でも本当に必要?利益配当付のデメリット
ここからは、私が「利益配当付は不要」と考える理由でもあるデメリットについて説明します。
デメリット①:保険料が高くなる
最も大きなデメリットは、やはりこれです。利益配当を設計に組み込むぶん、保険料が高めに設定されています。
たとえば、同じ保障内容の終身保険で比較した場合、利益配当付のものは、無配当型に比べて月々数百円〜千円以上高くなることがあります。数十年加入すると、トータルで数十万円の差になることも。
配当が必ず出るわけではない以上、この“上乗せ分”が無駄になってしまう可能性があるのです。
デメリット②:配当額は不確定
先述の通り、配当はあくまでも保険会社の経営状況次第。パンフレットに「○年後に○万円の配当」などと記載されていても、それはあくまで予定。実際には「思ったより少なかった」「まったく出なかった」というケースもよくあります。
「期待していたほどのリターンがなかった」という声は少なくありません。
デメリット③:仕組みがわかりにくく、誤解されやすい
配当の仕組みは一般の方にとっては非常にわかりにくいものです。「配当=利息のようなもの」と思っている方も多いのですが、実際には保険の原価計算の“差益”から出るもので、運用商品とはまったく異なります。
誤解したまま加入してしまうと、「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。
私が「利益配当付は不要」と考える理由
私が利益配当付をおすすめしない理由は、次の2つに尽きます。
- 保険料が高くなるのに、配当が確定ではないから
- 保障という保険本来の目的から逸れてしまうから
保険は「安心を得るためのコスト」として考えるべきです。配当を“お得”に感じる気持ちはわかりますが、それが目的化してしまうと、本来の保障を見失ってしまいます。
また、運用や貯蓄を期待するなら、NISAやiDeCoなど他の金融商品を活用したほうが、透明性が高く、成果も見えやすいと感じます。
保険選びで大切なのは「シンプルさ」と「目的の明確化」
保険選びで迷ったら、次のような視点を持つことが大切です。
- 何のために保険に入るのか(死亡保障?医療保障?)
- 保障額はいくら必要か
- 保険料は家計の中でどのくらいまで払えるか
この3つを明確にしていれば、「配当があるかどうか」にこだわる必要はなくなります。むしろ、無配当型のシンプルな保険で保障を確保し、浮いた分を自分で積立・運用したほうが効率的です。
まとめ:利益配当付保険は「不要ではないが、こだわる必要なし」
利益配当付保険は、確かにうまくいけば少しのリターンが期待できる設計です。でも、「高い保険料を払ってまで付ける価値があるか」と考えると、個人的には「わざわざ選ばなくてもいい」と思います。
保険は保険、運用は運用。
目的に応じて、シンプルに、無駄なく設計していくことが、後悔のない選び方につながります。
「配当ってなんとなくお得そう」で決めてしまう前に、ぜひ一度、保険の中身を見直してみてください。